1.本調査の目的
主として中高生による学校非公式サイトの発信、利用形態など実態を、質と量の面から調査することによって、この種のサイト利用の構造的特徴(サイトのメディア特性、サービス提供の仕組み、および管理運営、利用方法の特徴)を確認するとともに、そのサイト利用構造から生まれる青少年健全育成上の諸問題を整理し、問題解決の手がかりとする。
ちなみに本調査は、子ども達による発信サイトの数を正確に数え上げるのが目的ではない。(サイトは日々増減し、その形態も急激に変化するなど数量的確認作業には難しい側面がある)
本調査の目的は学校非公式サイトのメディア特性、提供および利用方法など構造的特徴を把握し、子ども達への影響を調査確認することにある。
(1)調査対象は3県
今回の調査では、群馬県、静岡県、兵庫県の3つの県の特定学校非公式サイトとスレッド型学校非公式サイト(匿名掲示板)について書き込み内容の評価、分析を行った。書き込み内容評価、分析の対象を3県に絞った理由は以下の3つである。
- 過去3年間の継続調査の経験からまず群馬県を基準に全国を観察することにした。群馬県では特定学校非公式サイトにおける子ども達の有害情報発信トラブルが全国的にみても早い段階でおきており、そのためトラブル相談などから子ども達の有害情報発信の種類と内容分析のための事例やデータが蓄積され、そこから調査方法の標準化も行われていた。それらの経験の蓄積を群馬県以外の地域で活用する必要から関東圏以外の中部圏、関西圏から兵庫、静岡の2県の2つのタイプの学校非公式サイトを調べることにした。
- 兵庫県は2006年度にNTTドコモ・モバイル社会研究所からの委託調査「中高生の携帯インターネット利用実態調査と利用問題解決に向けた提言」(群馬大学下田研究室が実施)で調査地区となり、その経験からスレッド型学校非公式サイト(匿名掲示板)が多いことや「人的ネットワークを使った探索方法」を駆使しやすい地域と判断されていたこと。
- 静岡県はスレッド型学校非公式サイト(匿名掲示板)の発信割合が兵庫県より少ないものの群馬県よりは多い。すなわち群馬県と兵庫県の中間タイプと推定された。また同県は学校非公式サイト全般の発信エネルギーが群馬、兵庫と同程度と判断されたこと。
3県の学校非公式サイト発信内容は、特定学校非公式サイトとスレッド型学校非公式サイト(匿名掲示板)の2種類に分けて評価、分析が行なわれた。なお一般学校非公式サイトとグループ・ホームページ型学校非公式サイトの内容については、今回はその印象を記述するに止める。
1)誹謗・中傷
特定学校非公式サイトは3県合わせて217サイトあり、そのうち誹謗・中傷が認められたものが102サイト、47パーセントであった。
ちなみに誹謗・中傷が認められないとした115件の中には、アクセス制限(パスワード)が掛かっていたり、文章不明の分が含まれている。
誹謗・中傷が認められた102件のうち、誹謗・中傷の対象を生徒と教師に分けると、生徒に向けられたものが49件(48パーセント)であった。これに対して教師を対象としたものは102件中26件(25パーセント)であった。その他には、学校外の商店や保護者などが含まれる。
| 図表1−8 誹謗・中傷の書き込みの有無(特定学校非公式サイト) |
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| 図表1−9 誹謗・中傷の書き込みの内容(特定学校非公式サイト) |
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2)猥褻情報
調査対象となった3県合計のサイトにおける猥褻情報の発生率は57パーセントであった(217サイト中123サイトで猥褻情報の発信があった)。
猥褻情報の発信を文字と写真など画像に分けると、文字情報の猥褻な書き込みが43件35パーセントであった。これに対して写真などアニメ、画像による猥褻情報発信は3パーセントであった。その他には、猥褻なサイト、ホームページへのリンクなどが含まれる。
| 図表1−10 猥褻情報の書き込みの有無(特定学校非公式サイト) |
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| 図表1−11 猥褻情報の書き込みの内容(特定学校非公式サイト) |
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3)暴力誘発情報
調査対象となった3県合計の217サイトにおける暴力誘発情報の書き込みの発生率は38パーセント(82サイト)であった。ちなみに九州地方では威嚇、侮辱表現などをともなう暴力誘発情報の書き込みの多いサイトを「喧嘩サイト」と呼んでいる。
| 図表1−12 暴力誘発情報の書き込みの有無(特定学校非公式サイト) |
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4)青少年に有害なネット広告
学校非公式サイトには出会い系や猥褻画像、アダルトグッズなど猥褻物販売サイトやサラ金、賞金サイト等青少年健全育成の基準からすると有害なネット広告が多く貼られている。中高生がこのような情報メディア環境を遊び場にしていることの是非がこれまで公に論議の対象にされてこなかった。このため今回の調査では学校非公式サイトにおける青少年に有害なネット広告の有無を調べた。
調査の結果、3県合計の217サイトの全てに有害なネット広告が確認された。全サイトに貼られたネット広告の種類にはゲーム系(パチンコも含む)が最も多かったが、そのうちで出会い系サイトのネット広告の貼り付けがゲームに次いで一番多かった。
| 図表1−13 特定学校非公式サイト(確認サイト数:217)における有害広告 |
- ゲーム 92件
- 出会い 89件
- 猥褻物・情報販売 64件
- 懸賞・アフィリエイト 60件
- その他 70件
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5)管理人のレベル
特定学校非公式サイトの管理にあたる管理人のレベルは、中レベルが最も多く、高レベルの割合は低い。
| 図表1−14 管理人のレベル(特定学校非公式サイト) |
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- 注)
- 学校非公式サイトの書き込み内容で有害な情報を、誹謗・中傷、猥褻、暴力誘発の3種に分けてチェックした。
- 上記3種類の有害情報発信のうち、3種類すべてが記入されているサイトの管理人を「レベル低」の管理人とした(レベル中は有害記入ポイントが1〜2、レベル高は有害ポイント0とした)。
6)実名あるいは実名が推定できそうな書き込み
3県217サイト中でフルネーム、虫食いなど表記の違いはあるものの個人を特定できる書き込みは51パーセント(109サイト)におよんだ。ちなみに「その他」は判読が困難な部分である。さらに個人を特定できる書き込みのある109サイト中フルネームの実名あるいは名字のみの書き込みを実名表記分とした場合、実名表記の割合は63パーセントとなりイニシャルあるいは虫食い(一部伏字など)表記分は37パーセントとなった。
| 図表1−15 個人が特定される表記の有無(特定学校非公式サイト) |
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| 図表1−16 個人が特定される表記のうち、実名表記の有無(特定学校非公式サイト) |
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その他、一般学校非公式サイトおよびグループ・ホームページ型学校非公式サイトの発信について
1)一般学校非公式サイトの発信について
一般学校非公式サイトは通常全国的な学校サイトランク(ポータルサイト)から探索する。同ランキングサイトで常に上位に位置しているサイトのいくつかは「学園もの」と呼ばれ、全国からの中高生の利用を想定して開設・運営されている。
この種のサイトのランキングの書き込みについては二つの共通的特徴がある。それはメル友や性的関係を持つ友達の募集が多いことや猥褻情報発信と大人の書き込みが他の種類の学校非公式サイトに比べて多いことである。特に猥褻情報発信の度合いは、4種類の学校非公式サイト中一般学校非公式サイトが最も高い。猥褻写真や出会い系サイト広告も他の学校非公式サイトより多いのが特徴である。
2)グループ・ホームページ型学校非公式サイトの発信について
探索が一般あるいは特定学校非公式サイトよりも難しい中高生の新しい発信遊びである。内容的には少数の生徒たちの「仲間の結束」のためのメディアとみなされている。今回は内容分析まで手が回らなかったが、発信内容は個々の小集団の趣味、思考、価値観のレベルを反映するサイト遊びと考えられる。つまりグループ・ホームページの運営にあたる小集団の価値観が反社会的であったりインモラルなものであれば特定学校非公式サイトより始末の悪い発信遊びとなろう。全国的に急速な普及がはじまっており、今後見守りが最も必要なサイトあそびである。