●笑顔に会いたくて 
特別支援教育、個別の教育支援計画など様々な問題をかかえている教育界。養護学校に勤める現役教員たちが、実践をするにあたり大切にしたい思いをつづったコラム。
▼2006年12月9日掲載
子どもたちの学びを求めて
2.自分探しの旅を共に
 私たちは、子どもたちと『自分捜しの旅』を共にして、それを支える仲間でありたい、そう思っています。私たちの支えがその子の生きやすさにつながり、素敵な自分探しの旅の手伝いができるならばどんなに素晴らしいでしょう。
ここでは、この旅を共にするにあたって大切にしたいことについて、いくつかまとめてみました。

B子どもに合わせたコミュニケーション
 コミュニケーションの取り方は一人ひとりが違っています。意思の疎通がどうしたらできるようになるかということは、日々悩むことが多い課題です。
 子どもたちは、言葉や場面をその子なりの認知の仕方で学んでいます。私たちは、子どもにあった言葉やサインを工夫し、いろいろな場面を利用して子どもに合わせたコミュニケーションを取るようにしなければなりません。それは、日常の会話につながっていくための学習をしていることにもなります。また、それを使っていくことで互いにわかりあえて余計な摩擦も減り、良い関係がもてるようになります。コミュニケーションがとれるということは、信頼関係を生み出す力にもつながっていくのです。

 クイズ番組が好きなだいきくんは、オウム返しになってしまって会話になりにくく、思いはたくさんあるのに相手との気持ちのずれによってパニックをおこしている子どもでした。そこで、質問についての答えを三者択一のクイズ形式にして選択させ、コミュニケーションを少しでも拡げていってはどうか、ということになりました。前日の遊びや買物の内容などを聞き取り、気分の良い時を見計らって取り組み始めました。
 例えばこんな具合です。「だいきくんが、今日やりたいことは何でしょうか?1番すべり台、2番ワープロ、3番電車あそび。さあ、何番ですか?」すると、だいきくんは「正解は3番。電車あそび!」などと応えるようになったのです。これを少しずつ発展させて、やがては文章的な選択肢も用意するようになっていきました。
 これが応えられるのだったら、選択肢がなくても応えられるだろうと思うのですが、そういうふうになったのはかなり後になってからです。そして、会話がオウム返しなどの形を取らなくてもできるようになっていきました。
 そしてさらに、これに刺激されたゆうすけくんが、指で「1」「2」「3」と示し応えるという行動が出てきました。言葉ははっきりと出ないがそのやりとりの意味が分かり、自分の意思表示がそのやり方でできるということが分かる、それは私たちにとっても大きな喜びでした。ゆうすけくんのように、会話の仕方がわからなくとも、いくつかの中から選択できる力を持っている子もいるわけです。
 
 オウム返しという行動は、「話の内容が理解できないよ」「どうやって答えればいいか分からないよ」という子どもたちからのメッセージです。さらに、話しかけられたことに一生懸命答えようとする行動は、コミュニケーションを拡げたり会話へつながる第一歩と捉えることができます。
彼らにとって、その自分に合ったコミュニケーション手段が活用される前と後では、意思を伝えることが驚くほど違ったものになります。それは、気持ちの安定と共に、教員との信頼関係の構築にも大いに役立ちます。信頼関係というのは、お互いの意思を投げかけあえる関係という言い方もできるでしょう。
 障害の重い子の場合は、もっと微弱な発信です。それらもしっかり受け止め「おはなししてくれてうれしい」と笑顔で返して楽しい一時を共有し、互いに気持ちが通うことこそコミュニケーションの基礎だと思います。その微弱な発信がより強く多彩に表情豊かになるように、日頃の関わりあいを大切にしていきたいものです。
 その他にも、言葉だけでは日課がイメージできない子には、絵カードや写真カードを工夫して提示することで日課が分かるようになりパニックが減った、と言うようなこともあります。視覚的なものだけでの判断をよしとしているわけではありませんが、コミュニケーションへの入口としてうまく使いたいと考えています。
 また、サインもいろいろです。その子のとれるポーズ(手を合わせ続けられない子は手ばたきする)や発音のしやすい似たようなことば(ちょうだい=ちーだい)を教えるとか、お願いもちょうだいもみんな同じサインにしておいてそのことがわかったら少しずつ分化させるとか、子どもの状態に合わせることが大切です。もちろんその子なりの出し方があるならば、こちらが形を決めずにそれを共有化していけばいいのです。
 
 子どもに合わせたコミュニケーションは、子どもたちの日常を安心できるものにし、生活を楽しく安定したものにしていくのです。

以下続く
    
   ※ホームページはこちら  「笑顔に会いたくて」 
過去の掲載
A行動は子どもからのメッセージ 2006年8月16日掲載
@心の支えになる 2006年1月 9日掲載
B自己を拡げるために 2005年9月18日掲載
A自己コントロールの力を育てるために 2005年8月 6日掲載
@“丸ごと”とらえて 2005年5月 1日掲載
子どもたちの学びを求めて 2005年2月26日掲載
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