気になっていた生徒への対応が遅れて大騒ぎになったことがあります。
真理は1年生。入学当初から職員室で目立ちました。大声で笑う、文句を言う、泣き出す…情緒不安定が懸念されました。
私は気になりながらも、他の業務に追われて手をこまねいていました。
部活動指導で日曜日に出勤すると、真理の担任の和田先生に会いました。20代後半。独身。なかなかの美男子です。
「真理ちゃん、大変そうだね」と話しかけました。「まいっています。エスカレートしていまして。夜中に電話があったり、私に婚約者がいることを知って、脅迫状みたいな手紙が来たり…」
「そんなに?」
「もうくたくたです」
「誰かに相談した?」
「いいえ。なんか、こんなこと言えない気がして…」
「私も迂闊でした。危ないですね。明日にでもチームを作りましょう」
翌日。職員室で電話を受けた和田先生の顔色が青ざめました。「真理?」と私。和田先生は首を縦に振ります。何か起きています。筆談を始めます。
〈真理がどうした?〉
〈自宅で自殺。もう死ぬ。さよならと言っています〉
〈電話を切るな。話し続けろ。方法を聞きだせ〉
〈睡眠薬。ふた箱…眠くなってきたと言ってます〉
〈眠らせるな。黙ったら大声で呼びかけろ〉
筆談の傍ら、他の先生に矢継ぎ早に指示します。「職員室を閉鎖。生徒・部外者を入れるな」
「救急車の手配をして」
「学年関係者を召集…」
「授業に空きが出るクラスに自習監督の手配!」
「保護者の職場に電話!」「管理職に連絡!」
〈もう呼びかけに応えない…〉和田先生が泣き出した時に救急車が到着。
しかし中から応答がない。ドアも窓も施錠。侵入出来ないとの連絡。
再び保護者と電話。窓等の破壊・侵入の許可を得、救急車に伝えます。
緊張の数分後…
「本人を保護。病院に運びます。意識不明。呼吸・心拍はほぼ正常」
職員室に静かな歓声が広がります。肩を叩き合い、互いの労をねぎらいます。和田先生は放心状態…みんなに「よくやった」と褒められています。
私は管理職に経過報告、マスコミ対策を依頼して陣頭指揮終了です。
相談担当者が危機介入の陣頭指揮をすることもあります。色々な勉強・訓練をしておきたいものです。 (史) (氏名は全て仮名です) |