社説「携帯電話サミット」
▼2001年12月21日掲載
 携帯電話の普及が、子どもの世界に様々な問題を投げかけている。この携帯電話が子どもに及ぼす影響は、大人が考えている以上に深刻だ。出会い系サイトや高額な利用料の請求を受けるサイトによる被害は、誰もが予測できる被害である。出会い系サイトの被害では、命が危険にさらされることもある。また、親にバレずに売春行為に及ぶ子どもも、自分の存在や精神を自己破壊へ追いこんで行く。携帯電話は便利な道具に違いないが、使い方の誤りや過剰な利用は、子どもの精神破壊に繋がる危険も孕んでいる。

 町中で友達と並んで歩く子どもが、隣を歩く友達とではなく、それぞれが自分の携帯電話に向かって指先だけを動かしている光景は異様としか言いようがない。かつて、NHKのテレビ番組で、子どもから携帯電話を取り上げる実験をしたことがある。被験者の子どもは一日携帯電話から離れただけで、強い孤独感を感じていた。これは、携帯電話に精神的依存をしている証拠である。携帯電話が手元にある時は感じないが、携帯が手元から離れると“禁断症状”が出る。無意識のうちに、いつも携帯電話の情報を気にかけ続けている子ども達には、どんな精神的影響が出るのであろうか。外界とのつながりが無い空間で、自分と向き合って、じっくりと考える体験を持たない子ども達はどう育って行くのだろうか。

 先般、「子どもを有害サイトから守る会」が、携帯電話サミットを開いた。そこでは、大学の教授、PTAの方等が意見交換を行いながら、携帯電話と教育、そして家庭の在り方についてディスカッションが行われた。考えてみれば有害サイトをつくるのは大人であり、そこで儲けるのも大人達だ。金儲を企み、あるいはそこに荷担する企業や組織が子どもを餌食にしている。子どもは生まれてくる時代を選ぶことも、環境を選ぶこともできない。家庭やPTA等、子どもと直接関わりがある大人達だけでなく、研究者やNPO、行政、通信関連企業などが情報を交換しながら携帯利用の啓蒙活動をして行かねばならない。携帯電話の普及は、技術と人間性の対決でもある。技術と人間性の調和も大切だが、調和よりも人間そのものの存在が問われる問題が、携帯電話問題であろう。ホームページ上の議論も良いが、やはり顔と顔を合わせて話し合う機会を持つことは非常に意味がある。そう感じた、「携帯電話 サミット」であった。

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