「教育環境と子どもをとりまく有害情報」シンポジウム速報
2000年8月26日開催
 8月26日大宮ソニックシティを会場に、NPO法人「子どもを有害サイトから守る会」が“教育環境と子どもをとりまく有害情報”をメインテーマにシンポジウムを開催した。このシンポジウムは今年の4月7日に開かれた第一回目のシンポジウムを受けて開催されたもの。このシンポジウムでは「学校、地域、家庭の連携の必要性と具体的な対応策について」さまざまな立場から講演が行われ、午後からはパネルディスカッションも開かれた。今回はこのシンポジウムの概要を紹介する。
開会あいさつ
大会実行委員長 小川 宗昭
  本日は御忙しい中、「教育環境と子どもをとりまく有害情報第2回シンポジウム」にご参会いただきありがとうございます。さて、私も長い間、教育ジャーナリズムに関わる仕事をさせていただき、教育専門新聞「全国教育新聞埼玉県版」の発行代表責任者として、教育問題と関わって参りました。
教育問題はそれぞれの時代を反映するもので、社会や家庭の影響を色濃く受け、次々と新たな教育問題が顕在化してきます。最近は自然環境の破壊や、少子高齢化、核家族化、あるいは高度情報社会の到来など、子どもをとりまく教育環境は著しい変化を見せています。とりわけ、ITと言われる「情報通信技術」の進化・発展は我々の予測を越えるスピードで進み、子どもをとりまく情報環境は大きく変わりつつあります。この様な情報環境の中で、子どもを有害な情報から守り、子どもが主体的に情報を活用する力を育てて行くことが大きな課題となりつつあります。
このシンポジウムが、子どもをとりまく有害情報をきっかけとした、「現在社会が包含しているさまざまな教育環境の悪化」について考えて行く機運の醸成に繋がればと願っております。
講演午前の部
全国教育新聞社 企画編集次長 梶浦 真
「情報教育の現状と課題  〜これからの情報教育に求 められるもの〜」
 今日のシンポジウムでは、子どもをとりまく有害情報について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
さて、現在はどのマスコミにも「IT」の文字があふれています。インターネットの利用を中心とした情報通信技術の進化は、経済的成長への期待や、医療分野への応用、教育への導入と、その可能性には大きな期待がかけられています。かく言う私も、インターネットを利用した情報収集や、電子メールによる情報通信を日常的に使うようになっています。郵政省の「通信白書」によれば企業や、学校、家庭でもインターネットの普及率は急速に伸びています。パソコンの消費拡大やiモード電話の普及を考えると、国民総インターネット時代は目前に迫っています。今後はテレビなどの家庭電化製品にもIT技術が取り入れられ、どの家庭からでもインターネットにアクセスできる時代が来るでしょう。
先日、文部省が発表した「学校における情報教育の実態等に関する調査」によると、小・中・高校ともほぼ100%の学校に何らかの形でコンピュータが設置されています。インターネットに接続している学校も急増しています。ところが、コンピュータを使って指導できる先生は、まだ、3割ほどしかおりません。しかも、私が学校へ実際に伺って感じるのは、学校間格差が非常に大きいことです。公教育でこんなに差があっても良いものかと考えてしまいます。教員の高齢化や管理職の無関心などがこの格差を生む原因になっています。今後は学校より先に、家庭でインターネットを体験する子どもが増えて来るでしょう。最近では、子どもがネットを使って犯罪を起こしはじめており、教育的な対応が急務になっています。車を運転するには交通法規を知らねばならないように、インターネットを使うにもルールやマナーがあることを教える場が必要でしょう。そう言ったネット上のルールやマナーを教えてから、インターネットに接続しうようという教育実践も広がりはじめています。また、「メディアリテラシー教育」の実践を始めている学校もあります。メディアリテラシーとは、「メディアを主体的に読み解き、機器などを活用し、コミュニュケーションを創造する複合的な能力」です。また、インターネットは双方向に情報交換ができますので、自分自身が発信する情報の自己批判能力も問われます。最後に「情報」とは何かと言うことも、よく考えて行かねばなりません。文字や写真や音と言ったメディア情報は、情報の一部にしか過ぎません。インターネットで「すごくおいしいいちごを食べました」と写真付きで相手に情報を送っても、相手にいちごを食べた体験がなければ本当の意味が伝わりません。ですから、表現の技術より、体験の共有が情報を伝え合う上で重要な意味を持つのです。
「IT」は確かに便利な技術ですが、本当の意味で人間を豊かにする技術にするよう、社会全体で考えていかねばならないでしょう。
講演午後の部
放送番組向上協議会 専務理事 加藤 滋紀氏
『放送と青少年に関する委員会について』
  私は長い間、NHKでテレビ放送に関わる仕事をしてきました。今日のシンポジウムはインターネットの世界を特に問題にしている様ですのが、私にはインターネットのことはよく分かりません。しかし、我々の「放送と青少年に関わる委員会」でも、子どものためと言うことでは共通ですので、今回話をさせていただくことになりました。
さて、「放送と青少年に関する委員会」はNHKと民放連が、視聴者から意見を頂き今後の放送番組の方向性を研究して行く目的で設置されました。「何だ、今頃になってでは遅い」と感ずる方も多いと思います。しかし、放送の質を向上させるために、今から31年も前に、「放送番組向上委員会」という組織が設置され、これまで431回も番組・放送をよくするための会議がおこなわれた来たんです。しかし、1997年に起きた神戸での殺人事件をはじめ、最近起きたバスジャック事件などをきっかけに、子どもの教育に特化した会が必要だと言うことになり、この四月に「放送と青少年に関する委員会」が組織された訳です。この委員会は強制力こそ無いものの、放送局対して非常に強い影響力を持っています。視聴者の皆様からの意見をいただき、放送局と視聴者の間に回路を結ぼうと言う狙いがこの委員会にあります。視聴者の常識と放送局の常識を近づけていこうとしているのです。先ほど主催者の方が「くだらない番組が多すぎる」と言っていましたが、そういう番組の視聴率が高いことも事実なのです。ですから、「質の低い番組は見ない」という家庭内の文化が育てば、自然にくだらない番組はなくなるのです。だれか独裁者が番組づくりの方向性を決めるのでなく、みんなの声で番組の質を高めていくことが大切です。ですから、我々「放送と青少年を考える会」に皆様方の声をお聞かせいただいて、よりよい放送番組を作っていきたいと思います。今世紀最高のメディアであるテレビ文化を我々視聴者の文化にして行こうではありませんか。
KDD主任研究員 井ノ上 直己氏
『コンテンツフィルタリングの現状』
 私はKDDに入社して、しばらく「自動翻訳電話」の研究をしていたことがあります。自動翻訳をするために必要な技術は、音声認識技術・翻訳技術・そして異なる国の言葉に音声を構成する技術の三つです。KDDではこの技術を応用して、インターネットの有害情報を阻止する技術の開発に取り組みました。技術的に有害情報を阻止する技術をフィルタリングと呼んでいます。アメリカの学校ではここ数年で飛躍的にフィルタリングを導入する学校が増えています。
さて、この様な有害情報を阻止するために1996年にアメリカ議会では「通信品位法」を作り、有害な情報を作らない、流さないという方向性で進んでいました。しかし、最高裁でこの法律が違法だという裁定を受けて、この法律は制定されませんでした。そこでフィルタリングが注目を集め始めた訳です。法律は有害情報を発信する側を罰して有害情報の流布を防ごうと言うものです。これと反対に、受信者側が有害な情報との接触を個人的に避けて行こうという考え方があります。しかし、情報の善し悪しを誰が選別して決めるのでしょうか。個人では情報の選別が難しいため、非営利団体や業者が、情報の善し悪しの格付けを行っています。その格付けを個人が利用できるようにして、フィルタリングを行っています。しかし、それでも全ての有害情報をカットできる訳ではありません。 そこで、KDDでは文章中でどのような言葉がどのように使われて居るかを解析し、有害な情報をカットする技術を開発しました。このシステムを使えば「女子高生が乗ったバスが北海道で事故」と言う文章と、「女子高生の画像が無料」を解析・比較してどちらが有害で、どちらが無害か判断できるのです。また、普通の単語による判断だけでは弾かれてしまう様な文章、例えば「乳がんの治療」といった文章も「乳」という言葉だけで弾かれることがありません。前後の言葉の意味を点数化して解析し、有害か無害かの判別ができます。このことにより、より多くの内容・情報の有害・無害が判定できるのです。今後もフィルタリングの学校導入はますます進むものと予想しています。
パネルディスカッション
●パネルディスカッション
     『情報社会における「学校・地域・家庭」連携の必要性と
                                具体的な対応策について』
獨協大学教授 鳥谷部 志乃惠氏
川口市立仲町中学校 教諭 設楽 敬一氏
町のホームページネットワーク 服部 順治氏
全国教育新聞社 企画編集次長  梶浦 真
 コーデイネーター 子どもを有害サイトから守る会 理事長 藤掛 紳一
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